試練の先には、必ず、いつか、ご褒美があると信じて。

息子は、小4のときに野球を始めました。息子は運動が大の苦手。運動会のかけっこはいつも最後尾を飾るばかり笑。その息子が友達に強く誘われたらしくて、自分から野球をしてみたいと私に言ったのです。

思えば、そこから息子の試練は始まっていたのかもしれません。

中学生になってからも野球熱は治らず、部活は野球部。まじめな性格なので、練習前には、誰よりも先にグラウンドに行き、草取り、慣らし、ボール磨き。ときにボールを沢山持ち帰り、一人必死にボール磨き。他の誰もしていないのに汚いボールは嫌だからと。

小4で野球を始めてしばらくした時の話ですが、お風呂に入っている私に用事があったのか、ガラガラと戸を開けた息子が、私の姿を見て、「え!?」と驚き、「お母さん、いつも、そうやって洗ってくれてるの?」と一言。「え?うん、そうよ〜」と私。

すると、お風呂から上がった私に、明日から自分がお風呂の時に洗うと言ったのです。私が入浴時に裸のままで野球の練習着を手洗いしてたんです。それを初めて見た息子はどう感じたのか?そう言ってからは、感心なことに、中学の部活引退まで、毎日、練習着やユニホームを自分で洗いました。

そんな、優しくていい子な息子ですが、優しいだけで野球は通用するはずもなく、中学最後の大会が近くなっても、いつも、ここぞと言うときには活躍できず、後輩に交代させられていました。
やはり、勝負の世界。いくら真面目に取り組んでも技術的にかなわないのでしかたないと私自身にいい聞かせていました。

そして息子にとって中学最後の大会です。大会前日になんと3番の背番号を貰ってきたのです。息子と一緒に大喜びしました。ファーストミットは部所有のものだったのですが、息子はいつも通りに家に持ち帰り、丁寧に手入れをした後、紐が切れているので買いに行きたいと言い出したのです。自分のお小遣いで紐を買って、修繕を終えた後、満足そうな顔をしてミットをタオルのお布団に寝かせていました。

そして迎えた最後の大会当日。

試合が始まると、息子はファーストにいませんでした。ベンチを覗き込むと後輩たちと一緒に声を出していました。3番の背番号をつけて。

試合中、誰よりも声を出し、ベンチに戻ってきた仲間にドリンクを渡し、誰よりも先にランコーに着き、試合が終了しました。

帰りの車の中で、息子は嗚咽をあげて泣きました。我慢してたのだと思います。
本当に偉かったね、お母さんは誇りに思うよ。と私も頑張って声をかけました。

勝負の世界。技術が勝るものが出場するのが当然。例え、万引きしたってタバコ吸ったって練習真面目にしなくたって、センスあるコは上手いんです。勝つためだから、野球道。

でも、きっと、試合後に先生から労いの言葉があったはずだよね?勝つために出すことが出来なかったけど、本当に3年間よく頑張った!って。その一言で救われるのに。

労いどころか、一言も声も掛けて貰えなかったそうです。

3番なんか渡されて勘違いすると思うに決まってる。息子のしてきたことは全く気付きもしない先生に心底腹が立って、文句の一つでも言ってやりたいとこでしたが、私がそんなことしたら、息子の行いを台無しにしてしまう!と怒り狂う心にいい聞かせて我慢しました。

ちゃんと神様はみてるんだから。全て、みてるんだから、でも、神様あんまりです。真面目にしている子どもになんて酷い、と思うと涙が止まりませんでした。息子を思い、夫と二人で夜中まで泣きました。

その後、部活を引退した息子は塾に通い初めて受験生へと気持ちを切り替えました。勉強なら負けないと強い思いを持って打ち込んだことや塾での新しい友や先生方との出会いが息子の原動力となり、ぐんぐん成績が伸びて行きました。

第1志望高校に合格をし、入学直後の試験では、なんと首席を獲得しました。でも、まぁ、最初で最後だったのですが笑
それから、高校3年間は息子は野球ではなく他のスポーツの部活に入部しました。進学校なので、緩い部でしたが、やはり、真面目な性格なのでいつも真剣に取り組んでいました。もちろん、スポーツは得意?って程ではないので、下手くそでした。

高校3年間はあっと言う間で、いよいよ大学受験。部活と友達が一番の高校生活を過ごした息子。入学当初がマックスだったのでは?と思うくらい成績が下がっていたので、息子の志望校は、多分無理だろうと思っていたのですが、誰に似たのか?息子、かなりのポジティブ人間。とにかく受験してみる!と言うので、第1志望の大学を受験することになりました。

ちゃんと神様は見ててくれました。
やっと、息子にご褒美をくださいました。
それは、きっと私に対してのご褒美でもあったんだと気付きました。

また、試練の真最中には気付かなかったのですが、小さなご褒美もいただき、積み重ねていました。息子の真面目な態度や思いやりの気持ちは、周りの後輩や先輩、沢山の友人たち、担任の先生、塾の先生。沢山の方々が息子を慕い、可愛がってくださっていました。息子を支えて下さる大勢の方々との出会いと言うご褒美をいつも貰っていました。

悪役=顧問の先生という、重要な登場人物の存在なくしては、息子は大きなご褒美やら小さなご褒美を貰えなかったのかもしれません。

今となっては、顧問の先生のことも恨んでいませんし、むしろ、とても貴重な経験をさせてくれたことに感謝しています。
あ、でも、やっぱり嫌いです。

そして、今、娘が中3。
まさに試練の真っ只中です。
神様、娘にはどんなご褒美を下さるのでしょう?彼女も試練に必死に立ち向かっている最中です。ちなみに私も娘同様、部活がらみの試練に日々立ち向かってます。

母は、ただ願うのみです。
どうか、心折れずに試練を乗り越えて欲しい。

考え、悩み、行動することは、きっといつか力になると思う。明けない夜はないのだから。

神様は、いつか、必ず、目に見える大きなご褒美と同時に人間力というご褒美もくださるのだから。